大会開催地である宮城県では、東日本大震災の被害を目の当たりにして参りました。被災地では、人々のこころの健康に注目が集まり、こころのケアにかかわる様々な取り組みも行われてきましたが、こころの健康を保ち、精神疾患を予防することの困難が続いていることも事実です。少子高齢化に伴う人口減社会へと移行するわが国の課題は、特に被災地においては加速度的に現実のものとなっています。国際的なグローバル化が進む一方で、人々の生活基盤である地域社会は大きく揺らいでおり、本学会の目的であるこころの健康に向けた予防的な取り組みの重要性はますます増してきております。
これからの困難な時代において、人々のこころの健康を保ち、精神疾患の予防と早期介入を進め、あらゆる人々が安心して過ごせる社会を作ることは、わが国のみならず、国際的にも重要な課題となっています。しかし、適切な予防/早期介入を実現するためには、医療のみならず、行政、保健、教育、福祉、科学など、関連するあらゆる領域の総力を結集し、地域住民と一体となった取り組みを実践していくことが必要です。不適切な介入による弊害を避け、安全かつ効果的な予防/早期介入のための方法論を確立するために、さらなる議論と研究を進めていくことが我々の使命であると考えます。
今回の学術集会では、特に、胎生期を含む発達早期からの子供や若者への予防や早期介入に取り組むための母子、学校、地域での取り組み、災害からの復興にも関係する地域コミュニティと精神保健との関わり、さまざまな精神疾患の予防と早期介入に向けた取り組みに注目したシンポジウムが予定されています。災害復興期にある仙台に、ぜひお集まりいただき、会員、関係者、そして市民の皆様のご参加と、活発な意見交換を期待しております。
第19回日本精神保健・予防学会学術集会
大会長 松本 和紀
(東北大学大学院医学系研究科 精神神経学分野 准教授)
大会長 松本 和紀
(東北大学大学院医学系研究科 精神神経学分野 准教授)